米国遺伝学協会(American Genetic Association)の刊行する学術誌『Journal of Heredity』105巻5号(2014年9-10月号)に、福島原発事故による放射線の生態系および人体への影響について、2011年夏から行われている国内外の調査研究から、3種の動植物(イネ、チョウ、鳥類)に関する研究が発表されました。このうち、琉球大学大瀧丈二研究室メンバーの共著論文「Fukushima’s Biological Impacts: The Case of the Pale Grass Blue Butterfly」(福島の生物学的影響:ヤマトシジミの場合)は、2012年に『Scientific Reports』に発表した論文「The biological impacts of the Fukushima nuclear accident on the pale grass blue butterfly」を補う内容で、2011年5月に採集した幼虫時被曝第一世代の成虫を親とするF1世代とF2世代(汚染のない実験室で育てたもの)、事故後6ヶ月後の福島で採集した被曝4~5世代後の成虫を用いて放射線影響の継代効果を観察しました。
また、福島事故の影響が少ない沖縄採集の同種を用いて、セシウム137の外部被曝と、福島で採集した植物を餌とした内部被曝について実験しました。その結果、世代間に遺伝する形態異常とDNA損傷の可能性が示唆され、ヤマトシジミの内部被曝と致死量・異常量の関係についても、定量的なデータを得ることができました。現在助成中のゲノム解析プロジェクトの背景となる論点が示されており、下記URLからだれでも無料で閲覧が可能です。