気候変動抑制に関するパリ協定から原子力発電の除外を求める活動から生まれた国際的なネットワーク「Don’t Nuke the Climate」が呼びかけている国際声明「安全で、手頃な価格で、気候に優しいエネルギーをすべての人に」に、一般社団法人アクト・ビヨンド・トラストとして賛同しました。
これは、国際原子力機関(IAEA)の主導によりベルギーのブリュッセルで開催された「原子力サミット」に
向けて、高コストで危険な原子力を気候変動対策の手段のように宣伝する原子力ロビーの主張に異議を唱え、各国政府に安全な再生可能エネルギーへの転換を呼びかけるものです。声明は原子力サミットの当日(2024年3月21日)に公開され、日本語訳を含む全文は下記のサイトで読むことができます。この共同声明には世界中から600以上の団体が賛同署名しました。
▼The IAEA’s nuclear fairy tales are leading nations — and all of us — into climate catastrophe.
What we need is:
Safe, affordable and climate-friendly energy for all.
(IAEAの原子力夢物語は国々(そしてわれわれすべて)を気候危機の破局へと導く。われわれが求めるのは「安全で、手頃な価格で、気候に優しいエネルギーをすべての人に」)
声明全文(Don’t Nuke the Climateサイトより転載)
「安全で、手頃な価格で、気候に優しいエネルギーをすべての人に」
国際原子力機関 (IAEA)とベルギーの内閣総理大臣の招待により、国際原子力ロビーは、2024年3月21日にブリュッセルで原子力サミットを開催します。原子力ロビーは、気候に優しいという仮面の下に隠れ、人々と地球を犠牲にして、実際の気候問題の解決策から目を逸らし、巨額の資金を流用しようとしています。
世界は複合的な社会的、環境的、経済的危機に直面しています。温暖化に関連した極端な気象現象、生活コスト、光熱費などに人々の心配が絶えません。原子力サミットに参加するロビイストや政治家たちは、それに対する答えとして新しい原子力発電所の建設を提示するでしょうが、これはベーシックなリアリティーチェックですぐに現実性が無いと分かります。
新しい原子力発電所は、気候の緊急事態に対処するにはスピードが遅すぎます。現行の原子力発電所の建設は大幅に遅れており、この10年間の炭素排出量の削減に大きく貢献することはできません。地球の気温上昇を1.5度未満に抑えるためには、温室効果ガスの排出量を2030年までに大幅に削減する必要がありますが、現在、企画公表されている新しい原子力発電所は、この期限を大幅に過ぎるまで送電網に接続されません。新しい原子力発電所は、エネルギーシフトを遅らせる障害でしかありません。化石燃料からの迅速な転換は、100%再生可能エネルギーシステムの構築とあわせて、エネルギー効率の向上、過剰なエネルギー使用の回避に焦点を当てるべきです。これらの措置により、公平で、環境に優しく、達成可能な方法で世界のエネルギー需要を満たすことが可能です。
原子力は再生可能エネルギーよりもはるかに高価です。現在進行中の原子力発電所のプロジェクトは巨額の予算超過と、コストの急激な上昇による相次ぐ解約に直面していますが、再生可能エネルギーはかつてないほど安価であり、原子力と比較して相対的なコストは急激に低下しています。2023年の世界原子力産業状況報告書によると、新しい原子力発電所は風力発電の最大4倍近く高価になります。政府は、実際に供給できる保証のない小型モジュール式原子炉のような高価な実験ではなく、住宅断熱、公共交通機関、再生可能エネルギーなどの実証済みの気候対策に投資する必要があります。
原子力は危険です。ウランの採掘から放射性廃棄物に至るまで、原子力エネルギーの生産は人々の健康、安全、環境に対するリスクです。原子力発電所は軍事標的になり、世界にまたがる核兵器拡散のリスク、劣化ウランや原子爆弾の使用のリスクも増大させます。また、熱波、干ばつ、暴風雨、洪水の増加は、原子力発電所自体や、事故の防止システムに重大な脅威をもたらすため、気候危機は原子力発電に伴うリスクを増大させます。
私たちは気候の緊急事態の中で生きているのです。時間は貴重であり、あまりにも多くの政府が原子力の夢物語で時間を無駄にしています。私たちが要求しているのは、雇用を確保し、地球上の生命を守る、安全で再生可能で手頃な価格のエネルギーシステムへの公正な移行です。