公正で持続可能な社会づくりを
エンパワーする
empowering actions for just and
sustainable society
2024年度事業計画
(2024年3月~2025年2月)
世界的には気候変動の激化、ロシアのウクライナ侵攻に加えて、イスラエルのガザ掃討戦などが、20世紀半ば以来の国際秩序を根底から揺るがし、国内では著しい政治劣化が日本社会全体に先の見えない閉塞感をもたらしている。abtの活動は、一つひとつは小さくても、そうした閉塞感に打開の道をつける一助でありたい。
2024年度事業計画(助成事業と独自事業※)は下記のとおり。引き続き、助成先の活動成果と支援を受ける満足度とを目安に、助成基金としての存在価値および信頼性の向上を図っていく。
※独自事業とは、NPO/NGOや研究者などへの助成やコンサルティングではなく、abt自身が行なうキャンペーンやイベント、調査企画を指す。
2024年度の組織運営方針
- 具体的で実効性の高い問題解決策の提示と促進を、助成事業および自主企画の主要指針とする。
- 他の助成基金やNGOとの連携によって日本の市民社会全体のエンパワーメントを図り、若い世代の社会関与を後押しする。
- ファンドレイジングの体制整備、寄付獲得をめざした各資材・施策を相互に組み合わせて、具体的な寄付獲得を促進し、財源の多様化と強化をめざす。
- 在宅勤務のネットワークで高い業務効率とコストパフォーマンスを保ちつつ、人間的交流や組織の一体感も育める働き甲斐のある職場に。
2024年度の事業計画
【助成事業】
ネオニコチノイド系農薬問題
生態系影響および人体影響の研究成果、市民活動による政策提言、一般市民の関与、オーガニック給食を求める全国的機運への後押しなどを効果的に組み合わせて、多角的・創造的に既存の農薬政策の方向転換を促す。
《公募助成》
昨年度に続いて「調査・研究」「広報・社会訴求」「市場“緑化”」「政策提言」の全4カテゴリーで公募を実施し、外部の有識者(研究者やNPOの代表者など)で構成される選考委員会で厳正な審議の結果、下記4件を採択した。
企画名 | 助成先 | 助成金額 |
---|---|---|
【新規】 | ||
秋田におけるネオニコ汚染実態の定量的解明と環境・食の安全基盤構築の県民的展開 | 秋田の環境を考える県民の会 | 1,980,000 |
環境DNA分析による「世界自然遺産の島」の水田の生物多様性へのネオニコチノイド系農薬の影響評価の試み | 城本(大野)啓子 | 630,000 |
【継続】 | ||
農家と消費者の参加型調査による農薬の圃場生態系への影響比較(2024) | 西日本アグロエコロジー協会 | 1,389,660 |
父性曝露影響から捉えるネオニコチノイド系農薬の継世代影響評価・エピゲノム毒性 | 神戸大学大学院農学研究科動物分子形態学分野星研究室・星信彦 | 1,000,000 |
《企画助成》
企画名 | 助成先 | 助成金額 |
---|---|---|
※2024年8月審査予定 | ||
未定 | 未定 | 1,000,000 |
エネルギーシフト
民意と正確な分析にもとづく脱原発政策の具体化・精緻化・社会化、地域に根ざす自然エネルギー活用の促進、ヒト(とくに子どもたち)と生態系の低線量被ばく対策につながる支援など、abtらしい助成を追求する。
引き続きabtでなければ取り上げられにくい企画を掘り起こし、ニーズに合わせた支援を行なう。顕在化し激化する気候危機の緩和策および適応策に、abtならではの関与と支援を強めていきたい。原発の再稼働阻止と放射性廃棄物最終処分問題への対処とをスペクトルの両端とし、その幅の中で最善の組み合わせを探りながら(主な助成カテゴリーは「政策提言」「再生可能エネルギー転換」「放射線影響調査」「被曝防護」の4つ)、外部の有識者(研究者やNPOの代表者など)で構成される選考委員会で厳正な審議の結果、下記4件を採択した。
(※ノーニュークス・アジア・フォーラム ジャパンの東アジア脱原発青年交流会は、東アジア部門の選考委員会でも審議した。)
《企画助成》
企画名 | 助成先 | 助成金額 |
---|---|---|
【新規】 | ||
東アジア脱原発青年交流会 | ノーニュークス・アジア・フォーラム ジャパン | 430,000 |
※東アジア環境交流と2部門にまたがるため、助成額は折半とする。 | ||
【継続】 | ||
福島第一原発をはじめとするハイリスク原発の空撮可視化プロジェクト | 秋田放射能測定室べくれでねが | 1,000,000 |
脱原発・脱炭素の地域づくりのための住民アンケート調査の実施 | 泊原発立地4町村住民連絡協議会 | 1,000,000 |
使用済核燃料問題に対する国際的視点からの取り組み~中間貯蔵と「革新炉」に着目して~ | 新外交イニシアティブ | 1,000,000 |
東アジア環境交流
沖縄を含めた東アジアにおいて、環境分野の実質的な交流・協働に寄与しうる企画で、とくに若い世代が牽引役となる活動を後押しする。なお、戦争や軍拡は深刻な環境破壊を引き起こすことから、「平和」も本部門における重要な要素の一つとみなしつつ、国や地域という垣根を越えて草の根の市民同士がつながり、持続可能な東アジアをつくり出す活動を支えていく。
東アジア各国政府間の関係に明るい兆しが見えない中、文化的共通要素の多い日中韓台4地域の市民同士が、可能な切り口で理解や連携を深めることの重要性がいっそう高まっている。前述のとおり、ノーニュークス・アジア・フォーラム ジャパンの企画はエネルギーシフトと 2つの 部門にまたがるため、両部門の選考委員会に諮り、助成採択を決定した。
《企画助成》
企画名 | 助成先 | 助成金額 |
---|---|---|
【新規】 | ||
東アジア脱原発青年交流会 | ノーニュークス・アジア・フォーラム ジャパン | 430,000 |
※エネルギーシフトと2部門にまたがるため、助成額は折半とする。 |
スポット助成
主要3部門にこだわらない環境分野の活動を少額助成(上限30万円)で支援するプログラム。通年の応募が可能であり、申請受理から採否決定までの期間が短いため、時限的なイベントや緊急性の高い活動などについては特に好評な枠である。スポット助成の後、翌年度以降に主要3部門で助成するというステップアップも可能とする。新しい助成先を発掘するツールとしても活用していきたい。
現在は、関係者(理事会メンバー、3 部門の外部選考委員、寄付者、スタッフ、および過去・現在の助成先)の推薦と紹介による応募形式だが、将来的には公募化も視野に入れて試行を続け、成果を重ねたい。
企画名 | 助成先 | 助成金額 |
---|---|---|
【新規】 | ||
未定 | 未定 | 2,100,000 |
※随時応募を受け付け、厳正な審査を経て採択する。 ※2024年度は7件程度を想定(上限30万円×7件=210万円)。 |
【独自事業】
2024年度に想定する自主企画および協働企画は次のとおり。
- アジア太平洋資料センター(PARC)との協働で、共同制作DVDを使った学習会の開催、DVD上映会開催企画を対象とする公募助成などに取り組む。
- 人体影響をテーマとするわかりやすいブックレットの出版を支える(年度内に刊行予定)。
- 全国宅配生協ネオニコフリー商品調査(「ネオニコ不使用」「ネオニコ削減中」といった表示に関する)を継続中。
- ネオニコ問題について、一般の消費者にもわかりやすい特設サイトを開設する(年度内公開予定)。
- 具体的な寄付獲得へとつながる実効性の高いコミュニケーションツールを整備する。
- 環境問題の解決に取り組むNGO/NPOや研究者などをゲストに招いたオンラインイベント「Future Dialogue」のシリーズを継続開催する。
- オフラインのファンドレイジング・パーティーを開催する(12月開催予定)。
- 遺贈寄付受け入れのためにREADYFORその他の中間支援組織等と協働を図る。
【その他】
独立性の高い市民メディア・非営利メディアの重要性がかつてなく高まっている状況下、abtを含む市民活動の目的達成を促進するためにも、任意団体「ジャーナリズム支援市民基金」に対する資金と運営面でのサポートを継続する。
ジャーナリズム支援市民基金が運営事務局を担うジャーナリズムXアワード(以下、JXA)が隔年開催となり(第5回JXAは2025年)、2024年度は第5回JXAの継続実施を前提にジャーナリズム支援市民基金の自立をめざした資金調達(FR)などを後押しする。