1月11日に台湾のFocus Taiwanに掲載されたニュースによると、国立台湾師範大学の吳忠信教授の研究チームは、代表的なネオニコチノイド系農薬の一つであるイミダクロプリドに汚染された昆虫を食べたコウモリが摂食行動中に「迷子になる」ことを発見しました。
吳教授の実験で、低用量のイミダクロプリドを継続して摂取したタイワンテラソカグラコウモリは、脳神経細胞の自然死滅が加速し、超音波を使った反響定位(エコーロケーション)機能に不全が生じることがわかりました。イミダクロプリドによって空間記憶に障害が生じたコウモリの飛行パターンは、本来覚えていたルートを大きく逸れ、昆虫を捕まえる能力も失ってしまう場合があったそうです。
吳教授は、台湾で生態系の指標にもなっているコウモリが近年減少していることを挙げ、「農薬の削減と汚染の抑制に努め、もっと自然と調和した生活をすべき」だと訴えています。またこれまで、農薬の標的とされる昆虫や、標的でないミツバチなどだけでなく、食物連鎖の上位にあたる鳥類にもネオニコチノイド系殺虫剤の悪影響が及ぶことを示唆する報告はありましたが、哺乳動物での実証例は少なく、今後、人体影響の解明につながりうる点でも世界的に注目を集めています。
▼ “Research finds pesticide impairs echolocation ability in bats” Focus Taiwan (2017/01/11)
▼ ”Imidacloprid toxicity impairs spatial memory of echolocation bats through neural apoptosis in hippocampal CA1 and medial entorhinal cortex areas” Neuroreport (13 April 2016 – Volume 27 – Issue 6 – p 462–468)
DOI: 10.1097/WNR.0000000000000562