地質学者 立石雅昭名誉教授は開口一番、原発、核廃棄物の最大のリスクは地震だと述べ、次のように語りました。「各地で大きな地震があり、現在の科学技術のレベルでは地震活動期がいつまで続くのかおそらく誰にも分らない。そんな中で核のゴミをどうしたらよいのか、全貌の無いまま進んでいる。7月28日に発表された科学的特性マップはそれなりに期待していたが、まったく科学性がないことにがっかりした」。
次に科学的特性マップの何が問題なのか、いくつかのポイントに分けてお話しいただきました。
1. 海岸線
沿岸20キロが好条件というが、海岸は崖が続いているところが多い。反対に、砂地のところはとても浅い。海の深さを測らないと、実際には運送できる港ができるかどうかも分からない。
2. 断層
特性マップでは、40キロより長い断層で、地表に現れている部分だけを「好ましくない特性がある」とマークしている。しかし、地殻変動があって断層が傾いている場合、地下に断層がある場合がある。これは、今まで地震が起こってこなかったけれど今後起こりうる可能性のある地域(地震空白域)として認識されているが、こうした知見が今回の特性マップには生かされていない。
3. 火山
火山は少なくとも100万年という歴史を見た場合、次々に場所を変えながら噴火している。従って、現在火山がない地域でも将来火山活動は起こりうる。それを考慮すると、「火山から15キロ」で済ませるというのは科学的ではない。
4. 国民的合意をどう作るか――日本学術会議の回答と提言について
日本学術会議は2度にわたって提言を出したが、経産省は無視している。重要なことは、今のような社会的な合意の無い中で、核廃棄物の扱いを進めることはできないということ。技術的な方策も、国民的合意の方策も持っていない現在、学術会議の提示する以下の3つの柱が重要なポイントとなる。
■総量規制(原発のゴミの総量を決めること)
■暫定管理(暫定的に乾式で地上保管をすること)
■社会的合意(討論の場を設置して多段階合意形成の手続きを取っていくこと)
5. これから大切な事
事業主体である国とは別に第三者機関を作り、客観的に評価できるようなシステムが必要だ。今の規制委員会でいいのかどうかも含め、検討が必要である。また、それぞれの地域自治体に拒否権が保障されているのかなど、地域住民の権利をどう保障していくかも重要だ。国策だからと言って進められてしまうことは否定できない。いずれにしても、正しい情報公開と、住民の意思を反映した合意形成が大事だ。
▼講演の詳細はこちらから
https://asjkakugomi.amebaownd.com/posts/2732895
▼科学的特性マップ公表用サイト(資源エネルギー庁)
http://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/rw/kagakutekitokuseimap/