琉球大学理学部海洋自然科学科生物系の大瀧研究室は、将来の原発事故などに備えるため、再稼働された原発地域を中心に西日本52地点で2015年の夏季にヤマトシジミを採集。その形態異常率および翅修飾率を調べた。研究結果は、Journal of Asia-Pacific Entomology(Volume 20, Issue 4)に掲載され、11月29日まで無料アクセスできる。
結果は、平均で異常率は3.8%、修飾率は0.8%であった。異常率・修飾率に関して、どちらも緯度、地面線量、原発からの距離とは相関が示されなかった。一方、性別、年間平均気温、月平均気温が異常率に影響を与えた可能性が指摘された。
大瀧研究室では、福島原発事故の生物影響についてヤマトシジミに関する知見を蓄積し、ヤマトシジミが原発事故の影響を受けたことを明らかにしている。今後、事故の可能性がある他の地域について、比較データとして事前のヤマトシジミの調査が必要であり、本研究を行なった。これらのデータセットは、将来の原発事故など人為・自然災害時における参照データとして機能するだろう。
▼Morphological abnormality rate of the pale grass blue butterfly Zizeeria maha (Lepidoptera: Lycaenidae) in southwestern Japan: A reference data set for environmental monitoring(Journal of Asia-Pacific Entomology 20:4)
https://doi.org/10.1016/j.aspen.2017.09.016