独立した科学者の国際ネットワークとして国際自然保護連合(IUCN)に助言する「浸透性殺虫剤タスクフォース」は、6月末にフィリピンと台湾で、それぞれ国際シンポジウムを開催しました。今年度abtのネオニコ公募助成先の一つであるネオニコチノイド研究会を代表し、また同タスクフォースの公衆衛生ワーキンググループ座長を務める東京女子医大の平久美子医師も、このシンポジウムに参加していました。
6月27日はフィリピンのダバオ市において、サウスイースタン・フィリピン大学ほかとの共催で、地元の研究者や学生ら150人以上が参加。昆虫食コウモリの反響定位能力がイミダクロプリドによって阻害された可能性(Chung-Hsin Wu氏)、農薬の使用が必ずしも水田の生産力向上に結びつかないという調査結果(K.L Heong氏)、ヒトの尿中からネオニコチノイドやその代謝物が検出されているのに、その発達神経毒性が十分に考慮されていない現状(平久美子氏)などの発表内容が、一般向けのニュースサイトにも詳しく報じられています。
6月29日には、台湾の台北市で国立台湾師範大学ほかとの共催で開催し、環境公衆衛生学の専門家でもある台湾副総統の陳建仁氏が開会スピーチを担当。「2027年までに世界で使用される浸透性殺虫剤の量を半減したい」という目標を提示しました。
2つの会合で人体毒性について発表を行なった平久美子医師は、abtに次のようなコメントを寄せてくれました。「ネオニコチノイドの使用は欧米で抑制傾向にありますが、新たな市場としてアジア、特に国際資本の入っている地域がターゲットとなっています。それに対抗するためには、殺虫剤に関する正しい知識の普及と、殺虫剤を減らす農業の工夫の両方が重要で、日本も同様であることを痛感しました。」
▼Systemic pesticides and their threats to humans, environment『The SunStar』
https://www.sunstar.com.ph/article/1750656/Davao/Feature/Systemic-pesticides-and-their-threats-to-humans-environment
▼NTNU Hosts Global Symposium on Systematic Pesticide 国立台湾師範大学
http://en.ntnu.edu.tw/news-show.php?id=12350