アクト・ビヨンド・トラスト(abt)のメンバーが、日々感じたことを徒然に綴る「abt徒然草」、第3回目は、アシスタント・プログラム・オフィサー 美濃部真光です。
日本のNPO/NGO活動は1995年の「阪神淡路大震災」から動きが活発になりました。これを受けて同年は「ボランティア元年」だとか「NPO元年」と呼ばれていますが、NPO/NGOのなかでも環境分野の団体の動きが活発になってきたのは、1992年のリオ・デ・ジャネイロで開催された「地球サミット」や、その5年後の1997年に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)「京都会議」ではないかと思います。そのころ、私はまだ中高生でした。大気や河川の汚染、大気汚染が引き起こす酸性雨や光化学スモッグ、廃棄物による自然破壊がニュースでしきりに報道されていた時代です。
それから20年以上が経過して、高度経済成長期から問題視されてきたそれら環境問題の一部は少し改善されてきている印象があります。法律化・制度化や企業の環境配慮が進み、市民の環境意識が向上したことが理由でしょう。水俣病やイタイイタイ病といった公害から学び、数多の環境NPO/NGOが企業・行政・政府・市民に働きかけてきた結果として勝ち取ったのが、今の住みよい社会なのだと思います。
しかし、いまだに残る環境問題がいくつもあります。米軍基地の問題と不可分な沖縄の自然破壊、原子力発電所の脆弱さが露呈したにもかかわらずいまだ推進の歩みを止めない日本政府と原発業界、化石エネルギーの燃焼と熱帯林伐採に起因する地球温暖化などなど……。なおも解決困難な状況を打破できない諸問題がいくつもあります。
話はいったん横に逸れます。高度経済成長期から自動車保有台数(2輪車を含む)に比例して交通事故発生件数は増加が続いていましたが、21世紀初頭より減少傾向に転じています。
(画像参照:http://www.slowly.or.jp/…/libs/446/201702211538272372.pdf より作成)
これは、自動車自体の性能向上もありますが、交通法・制度の確立、違反への厳罰化、運転者の交通マナーの向上などが主な理由として挙げられると思います。その背景には、市民団体による数多くの申し入れや陳情活動があったのではないでしょうか。
いっぽうで近年、高齢者による交通事故がニュースでも頻繁に報道され、社会問題化しています。少子化や若年層の車離れもあるため、ことさら高齢者の自動車事故の割合が大きくなっている部分もあるかもしれませんが、警視庁の調べでは65歳以上の交通事故死者数だけが横ばい状況にあることが分かっています。
この数字が示唆するのは、従来のような交通法・制度や、交通安全対策、自動車の性能向上だけでは解決しきれない問題の存在です。高齢者の死亡事故を減らすためには、福祉や共助の地域づくりといった観点で取り組んでいかなければならないのでしょう。
環境問題にも同じことが言えるのかもしれません。沖縄や原発、地球温暖化の問題も、これまでと同じような取り組みをするだけでは解決できないからこそ、今もなお問題が残っているのではないかと思うのです。
団体名にもなっているアクト・ビヨンド・トラスト「act beyond trust」とは、「信頼・信託(トラスト)は大切だけれど、ときにはそれさえも超えて行動することを支える基金(トラスト)」という意味です。私個人としても、団体名にも掲げているミッションに沿い、既存の体制や活動にとらわれず、具体的、効果的、創造的なアクションを推進できるように努めていきたいと思っています。