abtはこのほど、ネオニコチノイド系農薬に関わる市民活動支援の一環として、日本人の食生活で最も身近なお米とお茶を取り上げ、実際に流通する生産物にどの程度のネオニコチノイド系農薬が残留しているかを調査しました。同時に、ヨーロッパ連合(EU)に輸出された同一生産物の残留状況も少数ながら調べ、規制が厳しくなりつつあるEUと日本国内とで取り扱いに差が出てくる可能性を探りました。半年がかりで調査・分析した結果をまとめたのが、今回発表する19ページのレポートです。
お茶とお米と合わせて検体総数わずか40サンプルであり、産地も生産量1~3位の都道府県を選ぶなどランダムで、けっして断定的な結論を導ける調査ではありませんが、今後の検討課題として下記のような点が浮かび上がってきました。
➢ 日本で設定されているネオニコチノイド系農薬の残留基準値は欧米の数倍から数千倍に及ぶ場合が少なからずあり、米や茶葉という日々の消費量が多い国民的食品について妥当な基準なのか疑問
➢ 米についてはジノテフランのみが新潟県を除いて高率で検出され、ジノテフランが国内の稲作で幅広く使われていることを示唆する(他のネオニコチノイド系農薬はすべて検出下限未満)
➢ 米のジノテフラン検出値は国内の残留基準以下だが、EU基準を超えるものが多い
➢ 茶葉ではネオニコチノイド系農薬が複合的に使われており、チアクリプリド、アセタミプリド、クロチアニジン、フロニカミド、およびジノテフランの残留検出例が多い
➢ 茶葉では残留農薬の検出率、種類、および濃度について大きな地域差が認められる
➢ 茶葉の検出値もすべて国内の残留基準以下だが、14検体中12検体でEU基準を超えており、アセタミプリド、フロニカミド、およびジノテフランの超過検体数が多い
➢ 公的な検査では、残留基準値以下の正確な数値は公表されないことがあり、公表される場合も流通した数年後になる
➢ 公的な検査では、産地で使われるすべての農薬を調べるわけではなく、残留性の高いネオニコチノイド系農薬は検査項目に含まれないことが多い
➢ ひとつの作物に複数のネオニコチノイド系農薬が使用されているため複合毒性が考えられ、総合的な影響評価が必要ではないか
➢ 日本の慣行農法ではEUの残留農薬基準値をクリアするのは難しいことから、輸出対策をどうするか、また対策を取るとしても国内向けと海外向けのダブルスタンダードを容認していいかといった検討が必要だろう