2016年度公募助成の対象企画「ネオニコチノイド系農薬の生物への摂取経路と水環境リスクに関する研究及び啓発~金目川水系を例にして~」に携わった東海大学医学部の寺山隼人准教授が、イミダクロプリドの胎盤通過性と発達毒性を証明する研究を共著者の一人として論文発表しました。以下、簡単な解説をいただきました。
寺山隼人・坂部貢(東海大学医学部医学科基礎医学系生体構造機能学領域)
David Hampson(トロント大学薬学部)
ネオニコチノイド系農薬は標的害虫以外には安全であるとされ、世界中で汎用されている。しかしながら、ミツバチなど標的害虫以外への毒性や哺乳類の生殖器系、免疫系、神経系への毒性が指摘され始めている。
本研究では、哺乳類における母子への毒性は報告が少ないことから、妊娠マウスにおいて、ネオニコチノイド系農薬であるイミダクロプリド(0.5 mg/kg/day)をosmotic mini-pumpで連日曝露した。
その結果、出生児は数を減少させ、雌より雄の体重を減少させた。また、出生児は血清トリグリセリドの低下、運動活動の上昇、社会的優位性の向上などを示した。脳や肝臓のイミダクロプリド濃度は母体で検出され、一部の出生児で微量検出された。ここから、妊娠時期からのイミダクロプリド曝露は子マウスにおける行動や脳機能の変化を誘導することがわかった。
論文タイトル:Mammalian Susceptibility to a Neonicotinoid Insecticide after Fetal and Early Postnatal Exposure.
著者:Burke A, Niibori Y, Terayama H, Ito M, Pidgeon C, Arsenault J, Camarero P, Cummins C, Mateo R, Sakabe K, and Hampson D.
掲載誌:Scientific Reports. 2018;8(1):16639.
https://www.nature.com/articles/s41598-018-35129-5