(以下、国立環境研究所のリリースを元にご紹介)
去る11月14日、国立環境研究所は、「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」のデータに基づいた母親の尿中ネオニコチノイド系農薬等濃度と子どもの発達との関連を論じた研究結果を発表しました。
エコチル調査とは、環境省が2011年から実施している「赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいるときから13歳になるまで健康状態を定期的に調べる、出生コーホート(集団を追跡する)調査」で、血液・尿・毛髪などの試料を長期間にわたり収集しています。今回発表されたのは、この調査で蓄積された8,538組の母子のデータに基づくもので、母親の妊娠中における尿中の、オニコチノイド系殺虫剤を含む9種の浸透移行性殺虫剤(ネオニコチノイド系農薬等)およびその代謝物の濃度と、4歳までの子どもの発達指標(保護者が記載した質問票)との関連について解析しました。
解析を行なったのは国立環境研究所エコチル調査コアセンターの研究者らからなるグループで、解析結果は『Environment International』誌に掲載されました。この結果から、以下のようなことがわかったとしています。
◆母親の尿中ネオニコチノイド系農薬等濃度と子どもの発達指標との間に関連は見られない
◆ネオニコチノイド系農薬等の推定一日摂取量が許容一日摂取量を超える母親はいなかった
◆しかし、この解析は発達全体の遅れをスクリーニングするものであり、ネオニコチノイド系農薬等が持つ神経毒性を直接評価できていない可能性がある
この論文の結果に対して、研究者コミュニティからどのような検証や分析が加えられるか、さらなる続報を待ちたいと思います。
▼国立環境研究所「母親の尿中ネオニコチノイド系農薬等濃度と子どもの発達との関連について—子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)—」
▼「Association between maternal urinary neonicotinoid concentrations and child development in the Japan Environment and Children’s Study」『Environment International』
https://doi.org/10.1016/j.envint.2023.108267