アメリカ国立環境衛生研究所(NIEHS)が発行する論文誌『Environmental Health Perspectives』2017年2月号に、ジョージワシントン大学とNIEHSの研究者によるレビュー論文「Effects of Neonicotinoid Pesticide Exposure on Human Health: A Systematic Review(ヒトの健康に対するネオニコチノイド系殺虫剤の影響:体系的レビュー)」が掲載されました。
レビューでは、使用量が増え続けるネオニコチノイド系農薬の人体影響に関する調査研究を精査することを目的に、2005年から2015年に3つの論文誌データベース(PubMed、Scopus、Web of Science )に掲載された文献を調査。数段階の評価基準を設け、実際にネオニコチノイドに曝露したヒトの健康影響を正当な手法で調査したと考えられる研究8件を絞り込みました。
その結果、急性曝露による中毒者1,280人を調査した計4件の研究から2件の死亡例が報告され、職業的に被爆する林業従事者19人を調査した研究では悪影響は認められませんでした。また、一般集団を調査した4件の研究では、ネオニコチノイドの慢性曝露と発生時(胎児の成長過程)の悪影響もしくは神経学的転帰との関連性が認められました。報告された疾患には、ファロー四徴症(先天性心奇形)、無脳症、自閉症スペクトラム障害、記憶障害と指の震えを伴う症候群がありました。
この調査を受けてNIEHSの解説記事は、農薬研究者であるチャールズ・ベンブルック元ワシントン州立大学教授の次のようなコメントを紹介しています。「ネオニコチノイドの人体影響を検討することは喫緊の課題です。現在のリスク評価は現実にはあり得ないほど高い慢性参照容量に基づいていますが、内分泌系に対する低容量での影響に注目すべきです。現在主要な農作物のほとんどに用いられるこの農薬ですが、登録されていてよいのかという疑いが生じるでしょう」。
なお、このレビューで取り上げられた8件の論文には、IUCN浸透性殺虫剤タスクフォースのメンバーが執筆者に加わった、日本の患者の尿中アセタミプリド代謝物を調査した研究も含まれています。
▼Effects of Neonicotinoid Pesticide Exposure on Human Health: A Systematic Review. “Environ. Health Perspect” 25 (2)
https://ehp.niehs.nih.gov/EHP515/
▼Catching Up with Popular Pesticides: More Human Health Studies Are Needed on Neonicotinoids.”Environ. Health Perspect” 25 (2)
https://ehp.niehs.nih.gov/125-A41/