茶葉のネオニコチノイド汚染を調べた最新論文が、オープンアクセスで公開されています。この研究グループには、今年度のabt公募助成企画「ネオニコチノイド系殺虫剤の母子間移行メカニズムの解明」に関わるメンバーが加わっています。
この研究では、7種のネオニコチノイドとその代謝物20種について、国産の緑茶茶葉とスリランカ産の紅茶茶葉への残留を調査しました。国内各地産の茶葉39検体とスリランカ産茶葉30検体、ボトル入り茶飲料9検体を調べたところ、国産茶葉からはネオニコチノイド全種と代謝物9種が検出されました。
国産茶葉からの検出頻度と最大検出濃度が最も高かったのはジノテフラン(100%, 3004 ng/g)で、イミダクロプリド(92%, 139 ng/g)、チアクロプリド(79%, 910 ng/g)、チアメトキサム(79%, 650 ng/g)、クロチアニジン(74%, 233 ng/g)、アセタミプリド(67%, 472 ng/g)、ニテンピラム(3%, 54 ng/g)の順になりました。すべての検出値は日本の茶葉残留基準値を下回っていますが、そもそも日本の残留値がEUなどに比べて高いことも論文では指摘されています。また、ボトル入り茶飲料からはニテンピラム以外の6種が検出され、これもジノテフランの検出頻度が最多となっています。
いっぽうで、スリランカ産の茶葉からの検出はありませんでした。このような違いが出た理由として、日本でのネオニコチノイド系殺虫剤が幅広い地域で大量に使われている実態が示唆されるとしています。
論文は、子どもの神経発達への影響が毒性として考慮されていないこと、ネオニコチノイド代謝物の人体毒性がまだよくわかっていないことの問題性を指摘します。そのことを踏まえ、今回の検出値は1日許容摂取量(ADI)の範囲内に収まる濃度であるものの、長期摂取や多量摂取の影響に注意を払うべきだと結論づけています。
▼Yoshinori Ikenaka, et al. “Contamination by neonicotinoid insecticides and their metabolites in Sri Lankan black tea leaves and Japanese green tea leaves” . 「Toxicology Reports」 Vol. 5, 2018, pp. 744-749.
https://doi.org/10.1016/j.toxrep.2018.06.008