2018年に改定された「農薬取締法」に基づき、2021年から農薬の再評価が行なわれています。これまでは製品単位で3年ごとに再登録を行なっていたのを廃止し、原体(農薬に使用される物質)単位で15年ごとに見直すというものです。この評価結果に基づき、既登録剤についても原体規格を設定し、ADI(一日許容摂取量:ヒトが毎日生涯食べ続けても安全とされる量)、ARfD(急性参照用量:24時間以内に摂取しても健康への影響がないとされる体重1㎏当たりの量)等の毒性指標、農薬の使用基準、残留基準値等の確認または再設定を行なうことになります。新規登録と同様に、食品安全委員会、厚生労働省、環境省、農林水産省の4府省での再評価が進行しています。ネオニコチノイド系農薬では、アセタミプリド、イミダクロプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、チアメトキサムについてメーカーによる農林水産省への資料提出が完了し、現在評価中となっています。以下、簡略化した模式図で現状を整理します。
【農水省による再評価申請受理(①)】
2021年12月:イミダクロプリド、クロチアニジン、チアクロプリド
2022年3月:アセタミプリド、ジノテフラン
【農水省各部会での評価】
2022年12月23日の農業資材審議会農薬分科会で、各部会での審議に回すことが決定し(②)、各部会で評価中です(③)。蜜蜂影響評価部会では、2023年5月26日にイミダクロプリドとチアメトキサム、8月24日にイミダクロプリドについて、それぞれの曝露影響に用いる数値が以下のように決定しています。影響評価書は非公開ですが、以下の数値に基づいて曝露量推計のため継続審議中です。
n h LD50=n時間での半数致死量 ai/bee=ハチ1頭当たりの有効成分量 n d LDD50=n日での1日当たりの半数致死摂取量
【健康影響評価】
現在農水省から食品安全委員会に評価要請済み(2022/12/14)で(④)、食品安全委員会では農薬第一専門調査会等での調査が予定されています。農薬第一専門調査会(⑤)では2023年9月11日からイミダクロプリドの食品健康影響評価が行なわれています(非公開、継続審議中)。食品安全委員会の評価結果が厚生労働省に通知された後に、厚生労働省では残留基準値を審議します。
【環境影響評価】
鳥類登録基準設定検討会:2023年5月29日にイミダクロプリドの一部修正基準値案(非公開)が、11月10日にチアメトキサムの一部修正基準値案(非公開)とクロチアニジンの基準値案(非公開)が中央環境審議会水環境・土壌農薬部会農薬小委員会に諮られることが決定しました。
水域の生活環境動植物登録基準設定検討会:2023年5月15日にイミダクロプリドの一部修正基準値案(非公開)が、2024年1月31日にチアメトキサムとクロチアニジンの一部修正基準値案(非公開)が、中央環境審議会水環境・土壌農薬部会農薬小委員会に諮られることが決定しました。
▼再評価の進捗状況はこちらのページで更新されます。
農林水産省「再評価の審査の実施状況」
▼再評価制度そのものの問題点については、こちらの論考が参考になります。ぜひご参照ください。
環境脳神経科学情報センター「農薬取締法改正と農薬再評価の問題点」
▼日本内分泌撹乱物質学会もニュースレターを公開して問題点を指摘しています(PDF)。
日本内分泌攪乱物質学会「ENDOCRINE DISRUPTER NEWS LETTER」 May 2023, 25 (4)