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トップページ 法制度・生産量・製品名 11月末〆切! 農薬再評価中のフィプロニル、評価対象論文を公募中

現在、改正された農薬取締法に基づき、農林水産省がまとめ役となって、農薬の再評価(人体や環境への安全性の評価)を実施中ですが、11月1日、農水省は評価に際し考慮する学術論文について、公募開始を告知しました。

▼農水省「農薬の公表文献に関する情報募集の仕組みの開始について

これは、EUのEFSA(欧州食品安全機関)がネオニコチノイド系農薬の危険性が問題となったときに使用の暫定禁止期間を設け、そのあいだに危険性を指摘する最新の論文を収集したプロセスと一見似ています。しかし日本の場合は、農薬の販売を続けながら論文収集を行なっています。最新論文の公募によって多くの浸透性農薬の危険性を確認し、使用停止に踏み切ったEUと同様、日本でも禁止が実現するのでしょうか。

現在農薬の再評価に用いられている学術論文の報告書は、農水省が決めた公表文献収集のガイドラインに沿って、農薬メーカー自身が収集、選択し、農水省がガイドラインに沿ったものと確認して公開したものです。収集した論文は、まず適合性を欠くと判断されるものは除外されますが、最初に除外された論文情報は報告書に記載されません。

残った論文リストは、報告書に掲載され、除外理由も記載されますが、その評価理由を見ると、なぜ除外されたのか疑問が残る事例がありました。たとえば、北海道大学池中良徳教授、神戸大学星信彦教授らがフィプロニルの哺乳類への毒性を示した論文 “The effects of fipronil on emotional and cognitive behaviors in mammals” (2021)は、フィプロニルがイヌやネコではマウスよりも代謝されにくく、神経伝達物質の濃度への影響が見られたため、情動行動への影響可能性について示唆する研究論文ですが、メーカーの評価では「ヒトへの有害作用の評価には関連性がない」として、評価対象から除外されています。このように、メーカー自身が論文を選定する仕組みによって、客観的な適切・公平な評価が望めるかは疑問です。メーカーに不利な論文が削除される可能性があり、実際にそのような事例が起こっているのです。

▼農水省「公表文献に関する情報募集の対象となる農薬
「公表文献に関する報告書」に、メーカーが対象外とした論文のリストが掲載されています。

今回、ネオニコチノイド系農薬と同じく浸透性・残留性の高いフィプロニルの論文情報公募が行なわれています。フィプロニルの人体や環境への危険性を指摘する多くの査読論文を、私たち市民の手によって推薦することが可能です。論文の募集は11月30日まで。その結果、EUと同じくフィプロニルが使用禁止になるかどうか、今後の動向に注意していきましょう。

この問題に取り組む木村-黒田純子さん(環境脳神経科学情報センター)に、評価対象に取り上げてほしい論文をいくつかご紹介いただきました。ご参照ください。
フィプロニルのリスク評価で使用してほしい公表文献

同じく、ネオニコチノイド系農薬による人体影響研究の第一線に立つ平久美子さん(ネオニコチノイド研究会代表)がまとめた論文リストのほか、abtの助成先が公開した研究論文はこちらで参照できます。
論文リストほか