科学者の警告
日本で広く使われている「ネオニコチノイド系」の農薬や殺虫剤。その毒性と影響を科学はどこまで解明したのか――。最新の研究や規制の動向を abt が責任編集しました。ネオニコチノイドの危険性を科学的に伝える資料としてお使いください。[2020.12.1 現在]
ネオニコチノイド系農薬の危険性を、
科学者が警告しています。
1. ネオニコチノイドは農薬、家庭用殺虫剤、建材として、あなたの身近に迫っています。
2. ネオニコチノイドは水に溶けて植物の中に入り込み、川や海も汚染します。
3. ネオニコチノイドは長いあいだ残留し、分解されても毒性が続きます。
4. ネオニコチノイドは「害虫」以外の生きものも脅かします。
5. たとえ少量のネオニコチノイドでも、生きものに悪影響があることがわかってきました。
●ミツバチとその他のポリネーター(花粉媒介昆虫)12, 13
●害虫の天敵昆虫 13
アブラムシやハダニを食べるテントウムシ類に、捕食能力、生存期間、繁殖力などの著しい低下が生じます。ヨトウムシやイエバエなどの卵などに寄生するハチへの毒性も報告されています。
●ミミズなど陸生無脊椎生物 12, 13
● ミジンコなど水生無脊椎動物 12, 13
水や植物を通じて、摂食行動の異常、成長障害、行動性低下などの悪影響をこうむります。高濃度では水生昆虫の数と種類が減ってしまいます。
●鳥類ほか脊椎動物 12, 13, 16
6. 人間への悪影響も懸念されます。
7. 被害が起きる前に使うことで、逆に害虫被害を広げてしまう可能性があります。
8. 各国は規制強化、日本では逆行して残留基準の緩和が行なわれています。
■一般向けの概説・参考資料
1: アクト・ビヨンド・トラスト「 ネオニコチノイド系農薬とは?」(2013/10/23)
2: アクト・ビヨンド・トラスト「ネオニコチノイド系化学物質の国内使用に関する基礎データ」(2013/5/11、2017/11 一部改訂)
3: アクト・ビヨンド・トラストのリーフレット「ネオニコチノイド系農薬って?」(2013/10/23)
4: 国際環境NGO グリーンピース・ジャパン「リーフレット:みつばちをまもること=畑とごはんをまもること」(2014/4/4)
5: NPO ダイオキシン・環境ホルモン国民会議「新農薬ネオニコチノイドが脅かすミツバチ・生態系・人間」(2018 年改訂版)
■環境や食品への残留について
6: アクト・ビヨンド・トラスト「ネオニコチノイド系農薬残留調査レポート(米・茶)」(2014/2/18)
7: 農林水産省「国内産農産物における農薬の使用状況及び残留状況調査結果について」(2019/6/7)
8: 環境省「農薬残留対策総合調査(河川モニタリング、後作物残留等)の結果について」(2019/3)
■毒性・生態系影響
9: 五箇公一、早坂大亮「農薬の生態リスク評価は生物多様性を守れるか?~高次リスク評価法としてのメソコズム試験を通して~」『環境毒性学会誌』 vol.16, no.2, pp.21-28(2013)
» https://www.actbeyondtrust.org/wp-content/uploads/2012/02/Kagaku_201307_Kimura_Kuroda.pdf
10:
L. W. Pisa et al. “Effects of neonicotinoids and fipronil on non-target invertebrates”(2014/9/17)
» https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4284392/
11:
European Academies Science Advisory Council “Neonicotinoids: European Science Academies call for debate that expands beyond bees”(2015/4/8)
» https://easac.eu/media-room/press-releases/details/neonicotinoids-european-science-academies-call-for-debate-that-expands-beyond-bees/
12: 浸透性殺虫剤タスクフォース「浸透性殺虫剤の生物多様性と生態系への影響に関する世界的な統合評価書」(2015/4/30)
13: 浸透性殺虫剤タスクフォース「浸透性殺虫剤に関する世界的な総合評価書(WIA)更新版」(2019/10/31)
14: European Food Safety Authority “Neonicotinoids: foliar spray uses confirmed as a risk to bees”(2015/8/26)
15: U.S. Environmental Protection Agency (EPA) “Schedule for Review of Neonicotinoid Pesticides”
16: 産業技術総合研究所「ウナギやワカサギの減少の一因として殺虫剤が浮上」(2019/11/1)
■ヒトへの影響
17:
Junko Kimura-Kuroda et al. “Nicotine-Like Effects of the Neonicotinoid Insecticides Acetamiprid and Imidacloprid on Cerebellar Neurons from Neonatal Rats”(2012/2/29)
» https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0032432
18:
Kumiko Taira et al. “Relationship between Urinary N-Desmethyl-Acetamiprid and Typical Symptoms including Neurological Findings: A Prevalence Case-Control Study”(2015/11/4)
» https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0142172
19:
United Nations Environment Programme “UNEP Year Book 2013: Emarging Issues in Our Grobal Environment” (2013/2/18)
» https://www.unep.org/resources/year-books
20:
European Food Safety Authority “EFSA assesses potential link between two neonicotinoids and developmental neurotoxicity”(2013/12/17)
» https://www.efsa.europa.eu/en/press/news/131217
21:
黒田洋一郎&木村-黒田純子「自閉症・ADHD など発達障害増加の原因としての環境化学物質(上)」『科学』vol.83, no.6, Pp.0694-0708(2013) →『ネオニコチノイド系農薬問題とは?~情報・資料集~』人体影響編「発達障害」文献5
» https://www.actbeyondtrust.org/wp-content/uploads/2012/02/Kagaku_201306_Kimura_Kuroda.pdf
22:
黒田洋一郎&木村-黒田純子「自閉症・ADHD など発達障害増加の原因としての環境化学物質(下)」『科学』vol.83, no.7, Pp.0818-0832(2013) →『ネオニコチノイド系農薬問題とは?~情報・資料集~』人体影響編「発達障害」文献5
» https://www.actbeyondtrust.org/wp-content/uploads/2012/02/Kagaku_201307_Kimura_Kuroda.pdf
23: 池中良徳ほか「ネオニコチノイドの母子間移行の実態と移行メカニズムの解明」『第28 回環境化学討論会』口頭発表(2019)
■規制の動向など
24: 有機農業ニュースクリップ「ネオニコチノイド農薬関連年表」
25: アクト・ビヨンド・トラスト「ネオニコチノイド系農薬の残留基準値引き上げへ!」(2015/5/21)
26: 日本弁護士連合会「ネオニコチノイド系農薬の使用禁止に関する意見書」(2017/12/21)