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トップページ 助成先活動情報 「福島市の野生ニホンザルにおける放射線被ばくの次世代影響評価」に関する論文の公表

エネルギーシフト部門の助成先である羽山伸一さん(日本獣医生命科学大学教授)は、福島市のニホンザルが放射線被ばくによって受ける影響を研究しています。それらの内容に関する学術論文が2022年と23年に公表されました。論文の執筆者である羽山教授から簡単な解説を寄稿いただいたので、ご紹介します。


「福島市の野生ニホンザルにおける放射線被ばくの次世代影響評価」に関する論文の公表
日本獣医生命科学大学獣医学部野生動物学教室
教授 羽山伸一

2020年度よりabtの助成をいただいている私たちのプロジェクト「福島市の野生ニホンザルにおける放射線被ばくの次世代影響評価」の研究成果として、2つの論文を公表しましたので、その概要をご報告いたします。

◆放射性セシウムの筋肉中蓄積量の推移
放射線被ばく量を推定する基礎データとして、ニホンザルの筋肉中放射性セシウム濃度を原発事故直後の2011年4月より継続的に測定しています。これまで、事故後15か月間の推移(Hayama et al. 2013年、PLOS ONE 8(7): e68530.)や 2012年に捕獲された個体の臓器別蓄積濃度の違い(Omi et al. 2020年、BMC Research Notes 13, Article number: 121.)について報告してきましたが、今回は 2011年から2020年までに捕獲された個体でセシウム137の筋肉中蓄積濃度を測定し、経時的変化や性年齢および捕獲地点の土壌蓄積濃度との関係を明らかにしました。その結果、2011年から2016年までは筋肉中の蓄積濃度は低下していきましたが(下の左図)、2017年以降は蓄積濃度の低下が見られず、低線量被ばくによる健康影響があるとすれば、それがしばらく持続するおそれがあると考えられました。また、サルたちの餌が木の芽や樹皮などの放射性物質濃度が高い餌に依存する冬季間(12月から4月)では、筋肉中濃度が高くなる傾向が継続していることもわかりました。

論文の出典:Hayama et al. (2022) Time dependence of 137Cs contamination and transfer factor in wild Japanese monkeys after the Fukushima Daiichi nuclear accident. Environmental Science and Pollution Research 29:88359 – 88368.(https://link.springer.com/article/10.1007/s11356-022-23707-0

◆胎子成長への影響
放射線被ばくによる次世代影響として、私たちは原爆被爆者などで報告された新生児の低体重や小頭症に注目し、ニホンザル胎子の相対成長について調査をしてきました。これまでに、2008年から2015年に捕獲されたサル胎子の頂臀長(人の座高にあたる)に対する体重および頭部サイズの相対成長を被ばく前後で比較し、被ばく前と比較して被ばく後では成長遅滞が見られることを明らかにしました(Hayama et al. 2017年、Scientific Reports 7: 3528.)が、これらの遅滞の程度と被ばく量との関係は検討していませんでした。
今回、事故後10年を経過して被ばく量の低下が前述の論文でも明らかになったので、胎子の成長遅滞と被ばく量との関係を検討しました。2008年から2020年に捕獲されたサル胎子の頂臀長に対する体重および頭部サイズの相対成長と母親の体格や相対的内部被ばく量との関係をノンパラメトリック多重回帰分析により解析した結果、発育遅滞が母親の相対的内部被ばく量と相関することが明らかとなりました。

論文の出典:Hayama et al. (2023) Influence of radiation exposure to delayed fetal growth in wild Japanese monkeys after the Fukushima accident. Frontiers in Veterinary Science 10:1151361.(https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2023.1151361/full

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