9月19日、国際自然保護連合の要請を受けた独立系科学者の国際的なグループ「浸透性殺虫剤タスクフォース(TFSP)」は、カナダのオタワで『浸透性殺虫剤の生物多様性と生態系への影響に関する世界的な統合評価書』第2版の公開を発表しました(科学誌『Environmental Science and Pollution Research』の近刊に掲載予定)。これはTFSPによる2015年の評価書の続編となるもので、2014年以降に発表された500本あまりの論文を精査し、ネオニコチノイド系農薬とフィプロニルの生態系影響に関する最新の知見をまとめたものです。
第2版で明らかになった主な知見には、広範な汚染が表層水や地下水、土壌、植物、農産物などに及んでいること、ミツバチの神経学的影響や寄生虫の増加に関する新しいデータ、ミツバチよりも野生バチの感受性が高い可能性、抗菌剤との併用による毒性の増強、個体群の絶滅にもつながる水生無脊椎動物への悪影響の可能性、陸生哺乳類への広範な亜致死性の神経学的影響(記憶障害など)のほか、20年に及ぶネオニコの継続的使用により多くの害虫に耐性が生じ、農業でネオニコチノイド系農薬を使用することの価値が低下していることも含まれます。また、「第4世代」の浸透性殺虫剤であるスルホキサフロルとフルピラジフロンは、旧来のネオニコチノイドと共通の作用機序や代謝物が見られ、同様の影響が予想されるため、ネオニコチノイドの代替物として「持続可能性の観点から適切ではない」こともわかりました。
TFSP副委員長のジャン・マルク・ボンマタンは、「全体として、ネオニコを用いた地球規模の実験は害虫防除の明らかな失敗例と認識されつつあり……世界中の政府は、フランスに続いてネオニコを禁止し、持続可能な総合的害虫管理モデルへと速やかに移行すべきである」と述べています。
▼『浸透性殺虫剤の生物多様性と生態系への影響に関する世界的な統合評価書』2017年第2版
プレスリリースと要旨
▼ Jean-Marc Bonmatin 「Ban ‘neonic’ pesticides. Our food supplies are at risk」『The Globe and Mail』