abtパートナーであり国際自然保護連合(IUCN)の諮問部会である浸透性殺虫剤タスクフォース(以下、タスクフォース)は本日2月26日、賛否の分かれるネオニコチノイド系殺虫剤の農業利用が、かつて考えられたほど有効ではなく、利点の多い他の代替的な害虫防除策に転換できることを示す新論文を学術誌「Environmental Science and Pollution Research」に発表しました。全世界でトウモロコシやコムギ、各種の果物や野菜などの農作物に被害を与える様々な害虫の防除に使われるネオニコチノイド系殺虫剤とフィプロニルについて、それに対する実行可能な代替策との有効性を比較検討した200編以上の論文を考察したものです。
昨秋、先行発表された『浸透性殺虫剤の生物多様性と生態系への影響に関する世界的な統合評価書』増補第2版(WIA2)の第1章と第2章に続く第3章を構成する 今回のレポート「浸透性殺虫剤の代替策」は、 総合的病害虫管理(IPM)の原則と手法を用いることが費用に見合い、効果的である点を明らかにしています。主なポイントは次のとおり――
・ ネオニコチノイド系殺虫剤で処理した種子を使っても、ほとんどの場合、収穫量の増加をもたらさない。
・ 低コストで害虫の発生リスクを早期に検知するための、信頼性の高い複数の方法が存在する。
・ 農業生産者を経済的リスクから守りつつ、効果的な害虫防除を達成する有効な戦略が利用可能である。たとえば、農家を不作から守るために設計された革新的な保険制度としての「共済」モデル(添付資料参照)がその一つ。
・ IPMを用いるか保険でカバーするかを問わず、すべての代替シナリオが、ネオニコチノイド系殺虫剤で処理した種子を使うより安上がりである。
折しも3月には、EU加盟各国の議会で、EUが2013年末に施行したネオニコ暫定規制の拡大強化を問う投票が行われる予定です。タスクフォースの共同議長を務めるフランス国立科学研究センターのジャン-マルク・ボンマタンは今回のレポートに関する報道発表で、「規制当局には、もし我々が持続的な農業を望むのなら、より厳格な規制の枠組みと、転換を望む農家への支援プログラムが必要であることを認識してほしい」と語り、「ネオニコチノイド系殺虫剤に対する新たな規制が検討される中、代替策が手の届くところにあることを示す我々の知見は、格別の意味を持つだろう」と 釘を刺しています。
▼詳しくは
「世界規模の科学的レビューが示す ネオニコチノイド系殺虫剤とフィプロニルの効果的かつ実行可能な代替策」(報道発表概説)
「浸透性殺虫剤の代替策」(同背景資料)
Furlan, L., Pozzebon, A., Duso, C. et al.「An update of the Worldwide Integrated Assessment (WIA) on systemic insecticides. Part 3: alternatives to systemic insecticides」 Environ Sci Pollut Res (2018).
https://doi.org/10.1007/s11356-017-1052-5