原子力規制委員会は、原発事故の際に甲状腺被ばくを抑える安定ヨウ素剤の事前配布について、配布範囲はPAZ(5km圏)内のみ、「妊婦や授乳をする女性らを除き、原則40歳未満」に配布するという検討案を了承した。
提言は「副作用のリスクより、服用しないことによる甲状腺の内部被ばくのリスクの方が大きいことを平時から周知することが必要」と述べているにもかかわらず、UPZ(30km圏)への事前配布の拡大は見送られた形となった。
安定ヨウ素剤配布の年齢制限については、福島第一原発事故後、2012 年 1 月の第 29 回原子力安全委員会被ばく医療分科会で「40 歳以上で被ばくした場合の甲状腺がん罹患率の上昇を示す報告がある以上、40 歳以上の住民等を服用対象者から外すべきではない」という論議があり、2013年の「安定ヨウ素剤の配布・服用にあたって」(原子力規制庁)では、PAZ圏住民全員が配布対象とされたが、今回、40 歳未満に制限する新たな理由は示されておらず、結局、住民の安全ではなく、配布対象者を減らすことで配布率を上げるための検討結果だったと言わざるをを得ない。
今回、配布方式のオプションとして提示された薬局配布方式については、「『医師による住民への説明会』を前提とした上で、地域の実情に応じて薬剤師会の協力による事前配布が適当」という提言内容が盛り込まれ、医師の説明会に参加できない住民に対しては、薬剤師が問診表を使って説明しながら薬剤を渡す方法が最も合理的で効果的だと認める形となった。
今後、原子力災害対策指針等の改定に向けたパブコメ募集が始まるが、配布対象者 40 歳制限撤回と、少なくとも UPZ(30㎞圏)内の事前配布を求めていきたい。
▼安定ヨウ素剤に関する規制委の新提言批判
http://www.jca.apc.org/mihama/News/news158/news158iodine.pdf
▼「安定ヨウ素剤の服用等に関する検討チーム」会合の検討結果及び今後の予定について(原子力規制庁/平成31年4月10日)
http://www.nsr.go.jp/data/000267091.pdf