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トップページ 研究紹介・解説 ネオニコチノイド、母体から胎児へ移行 日本の研究グループが曝露実態を明らかに【ネオニコチノイド研究会、NPO福島県有機農業ネットワーク】

北海道大学の池中良徳准教授を中心とする研究グループが、ネオニコチノイドの母体から胎児への移行に関する研究成果を6月12日、環境化学討論会で発表し、日本人は胎児期からネオニコチノイドの曝露を受けていること、その摂取源は飲食物である可能性が高いことなどを明らかにしました。研究グループの平久美子氏(ネオニコチノイド研究会)、長谷川浩氏(NPO福島県有機農業ネットワーク)はabtの2018年度助成先でもあります。(※カッコ内は助成先名称)

同グループは2016年、3 ~6 歳の幼児を対象とした疫学調査を実施し、すべての幼児の尿中から単一または複数のネオニコチノイドおよびその代謝産物が検出されることを明らかにしました。

しかしこれだけでは胎児が母体内で曝露を受けているのか不明だったので、今回の研究ではネオニコチノイドの母子間移行メカニズムの詳細を明らかにするために、ニホンザル、とくに胎児を有する個体に注目し、その母体と胎児の血液、胎盤、各臓器の詳細な分析を行ないました。また、これと併せてマウスをモデル実験動物とし、投与実験による母子間移行メカニズムの解明も試みました。

有機食材の摂取による体内のネオニコチノイド低減ネオニコチノイドの摂取源解析では、ボランティアを募り、ネオニコチノイドを使用していない有機食材を 5 日間および 30 日間摂取してもらった上、尿中のネオニコチノイドの変化を調べました(グラフは有機食材の摂取による体内のネオニコチノイド低減を示したもの)。

こうした研究の結果、日本人は胎児期からネオニコチノイドの曝露を受けていること、ネオニコチノイドは胎盤関門を速やかに通過して母体から胎児へ移行することが明らかになるとともに、その主な摂取源は飲食物であり、ネオニコチノイドに汚染されない食材を摂れば、比較的短時間で体外排出できる可能性が高いこともわかりました。

なお、今回の発表を構成する独協医科大学による新生児尿のモニタリング研究は、科学誌PLOS ONEに発表されました(下記リンク参照)。極低出生体重児(1500g未満)は、生後48時間は乳を飲まないため、検出されたネオニコチノイドは母体由来であると考えられます。ヒトにおいても、ネオニコチノイドが母体から胎児に移行することが、世界で初めて証明されました。

▼PLOS ONE「LC-ESI/MS/MS analysis of neonicotinoids in urine of very low birth weight infants at birth」
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0219208

▼第28回環境化学討論会抄録「ネオニコチノイドの母子間移行の実態と移行メカニズムの解明」池中良徳, 口頭発表〈埼玉;2019 年〉
https://www.actbeyondtrust.org/wp-content/uploads/2019/06/kankyokagaku.pdf

【abtよりお知らせ】
NPO福島県有機農業ネットワークの「有機農産物摂取による尿中のネオニコチノイド量低減に関する調査研究」の成果報告については下記の動画でご覧になれます。ネオニコチノイド研究会の研究成果については、この時点で論文発表前だったため映像未収録です。

▼2019年4月14日 公開セミナー「ネオニコ大会議 食べものと生きものを守ろう!」~オーガニック給食の事例からネオニコチノイド系農薬を考える~
https://www.youtube.com/watch?v=v4W77MOiCWc&list=PL5EUGm6cSn0WX1bWuE4XS-X_u1lO1s_33

※論文内容紹介に一部間違いがありましたので、執筆者の指摘を受けて修正いたしました。
[2019/6/21初版公開、2019/7/5修正版公開]