2016年から2017年にかけて大きな議論がありながら決まった「福島第一原発事故の賠償費用と廃炉円滑化負担金の託送料金への上乗せ」がいよいよ10月から始まります。これは、本来東京電力および原子力事業者が責任をとり負担すべき費用を消費者が負担するというしくみで、2つ大きな問題があります。
●賠償負担金: 事故前に確保されておくべきであった賠償への備えの不足分の一部2.4兆円が、2020年以降託送料金で回収されることになった。年間約600億円程度が、40年間にわたって回収される。
●廃炉円滑化負担金: 円滑な廃炉を促す環境を整備する観点から、廃炉に伴って一時的に生じる費用の分割計上が2013年に可能となり、この分は小売規制料金(電力の小売全面自由化に伴い、小売電気事業者間の競争が十分に進展するまでの間とられた料金規制経過措置によるもの)から費用回収が認められていたが、2020年以降は託送料金(電力を送るための送配電ネットワークの利用料金)で回収することとなった。
賠償負担については、責任主体である原子力事業者だけでは負担しきれず、事後的にでも消費者に負担を求めなければ成り立たないということが改めて明示されています。2016年の議論で、確保すべき資金の全体像として「21.5兆円」と整理されましたが、そもそもこの金額も不十分で低い見積もりであり、35兆~80兆円にもなりうるという試算もあります。(日本経済研究センター、2017年3月7日)
今後、廃炉費用や賠償費用が21.5兆円を超えて必要になった際に、同様にまた託送料金に追加ということにもなりかねません。2016年の議論で経済産業省は、「今回限り」と繰り返していましたが、二度と追加されることがないよう、引き続き監視していかなければなりません。
また廃炉円滑化負担金についても、本来は原子力事業者が負担すべき費用です。原発は消費者が広く負担して支えなければ成り立たない事業だということがここでも示されています。廃炉を円滑に進めやすくするとの名目で導入されたのですから、脱原発の政策決定をしたうえで、現在稼働している原発についても、速やかに廃炉に踏み切るべきです。
エネルギー基本計画の改訂(第6次エネルギー基本計画)が議論されようとしている今、このような原子力事業の限界、矛盾を伝えるために、次のような意見を添えてパブリックコメントを送りましょう! (9/7〆切)
-賠償については本来東京電力が責任をとるべき、廃炉費用については原子力事業者が負担すべき費用です。
-賠償費用の上乗せが繰り返されることのないように。
-消費者にわかりやすく賠償負担金と廃炉円滑化負担金の内訳明記を!
【パブコメ送り先】
「電力の小売営業に関する指針」(改定案)
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620220015&Mode=0
消費者としては、原子力事業を持つ電力会社に対して電気料金そのものを支払わないという意思表示も必要です。原発を持つ電力会社にはNoの意思表示、再エネを重視する電力会社を選びましょう!
再エネ電力会社一覧と再エネ電力会社への切り替え方はこちらから
http://power-shift.org/
▼福島第一原発事故の賠償負担金と廃炉円滑化負担金の託送料金への上乗せが開始、2020年10月1日から
http://e-shift.org/?p=3891